生前贈与の基本


生前贈与によって、土地や建物の登記を移転するには、名義変更を行うことになります。そのためには、申請書と必要書類を準備し、法務局へ提出する作業が必要です。必要書類は、不動産の権利証、不動産の登記簿謄本、贈与者の印鑑登録証明書、受贈者の住民票、登記原因証明情報(贈与契約書)、固定資産評価証明書です。申請書については、必要とされる情報の記載があれば、特に書式等の指定はありません。登記の目的や原因、権利者や義務者、課税価格や登録免許税、不動産の表示などについて記したものを作成します。法務局での申請手続きが済み、名義変更が完了すれば、土地・建物の権利証が発行されます。

 

 

 

生前贈与の場合は、贈与者の自由意思と希望によって、その不動産を受け取る者を決めることができます。生前贈与をせず、遺言の用意もなければ、相続人同士で遺産分割協議をすることになります。この際に遺産トラブルになる事態も考えられますが、生前贈与であればそのような問題が生じません。また、死後の遺産分割協議に比べて、生前贈与による登記移転手続きが短い期間で済みます。贈与契約書を作成し、不動産の所有権移転登記をするだけで手続きが完了します。相続財産が減り、相続税の節税につながります。生前贈与による贈与税の対象となりますが、年間110万円までの基礎控除を利用することもできます。また、、不動産のうち110万円分を生前贈与し続けると、数年後には対象とする不動産の全体を受け渡すことができます。

 

 

 

生前贈与は、良い点ばかりでなくデメリットもあります。不動産を生前贈与すると、その分の税金が課税され、手続き費用も必要となります。課税される贈与税が高額になると、相続税を超えるほどになるのであれば、生前贈与をするメリットがありません。前もって、贈与税の控除の制度、不動産取得税を確認しておく必要があります。このどちらの方が税金的に有利なのかは、素人では難しいので税理士さんに相談することをお勧めします。

 

不動産の生前贈与には、特例があります。相続時精算課税制度では、贈与する者が亡くなった際に、贈与税の課税対象となります。このため、税金を納める時期を遅らせることができます。この制度には条件があり、被相続人が60歳以上で、子か孫に対する、2500万円分までの贈与が非課税対象となります。注意したいのは、この制度を利用すると、110万円の控除制度は使えなくなるということです。どちらの制度を利用するのか、税理士さんなど専門家に相談することをお勧めします。もう1つ、土地の贈与に伴って非課税となる特例があります。20年以上の婚姻期間のある夫婦の間で、土地の価格2000万円までの場合です。ただし、贈与の翌年に、忘れずに確定申告手続きを取る必要があります。また、生前贈与した不動産に関わる税金の納付時期に合わせた資金繰りにも注意が必要です。