物忘れによって大切なものをなくしてしまったり、先ほどのことを思い出せなかったりすることがあります。ただの物忘れであれば問題ないですが、認知症の物忘れは日常生活にまで支障をきたします。この認知症の割合は年齢が高くなるにつれて増加し、85歳以上では約4人に1人が認知症であると言われています。そのため、高齢社会を迎えている先進諸国において、認知症は極めて重要な疾患の一つとなっています。
年を取ると誰でも物忘れが起こります。つい先ほどまで行っていたことを忘れてしまったり、なかなか新しいことを覚えられなかったりします。しかし、これは加齢によるものなので、ある程度は仕方ありません。物忘れは誰にでも表れる老化現象の一つです。物忘れの特徴としては、「体験の一部を忘れていること」があります。また、何かの拍子に思い出すこともあります。この場合は認知症ではないため心配はいりません。しかし、認知症は病気の一つであり、物忘れとは全く別物として区別する必要があります。一般的な物忘れが体験の一部であるのに対し、認知症では「体験の全てを忘れていること」が特徴となっています。そのため、自分が体験したことを忘れてしまっている自覚がなかったり、時間や場所が分からなくなったりします。このような場合であると、注意が必要となります。
・同じことを何度も言う
・置忘れやしまい忘れが多い
・化粧や買い物をしなくなった
・ささいなことで怒る
・以前は熱中したことに興味や関心を示さなくなった
・少し前のことや聞いたばかりのことを忘れる
・約束を忘れてすっぽかすことが多い
・知っているはずの人の名前が思い出せない
加齢による物忘れは誰にでも起こる脳の正常な働きですが、認知症は脳の病気です。認知症では後天的に脳に何らかの障害が起こり、認知機能が低下してしまいます。物事を考える中枢として、脳は全てをつかさどる司令塔としての働きをしています。物事の記憶や判断は脳で行っており、体を動かすなどの指令も脳からでています。そのため、脳が傷害されることで「同じことを何度も言う」など記憶・判断に関わる機能が鈍くなり、最終的には体が思うように動かせなくなって寝たきりとなります。このように、脳が障害されてしまうと日常生活に支障が出てしまいます。必ず症状として表れる認知症の中核症状とは違い、周辺症状は「その人に対する接し方」によって症状が大きく異なります。つまり、周辺症状は日々のストレスによるものが大きいです。認知症患者は「忘れること」によって、日々の大きな不安を抱えています。これに、周囲からの好意・やさしさが加わると、「安心感」を得ることができます。認知症患者にとって、この「受け入れられている」という安心感が重要なのです。
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